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襟首を後ろからわし掴みにされる恐怖に、相田君は大声で叫んだ。
「う……わああああぁぁぁぁぁぁぁ……あああぁぁぁぁぁ!!」
自分の大声で目が覚める。
薄い毛布を跳ねのけて、相田君は布団から飛び起きた。
周りで寝ていたクラスメイト達が、何事かと起き出して来る。
誰かが電気を点けてくれたのだろう、部屋の中が急に明るくなる。
途端に部屋のあちこちから悲鳴が上がった。
「うわっ、何だこれ!」
「どうなってんだよ!?」
悲鳴の理由はすぐに分かった。
部屋の中にひどいニオイが充満していたのだ。
真夏に何日も外に出しておいた水のニオイ。
腐った水草や泥の混じった水たまりが、そこらへんに出来ている。
クラスメイト達が騒いでいるのを聞きつけたのか、担任の先生がバンガローに顔を出した。
「おい、何を騒いでいる! 何時だと思ってるんだ!」
そして部屋に一歩入るなり、鼻の上にしわを寄せて顔をしかめた。
「何の臭いだ、こりゃ……」
先生は誰かがいたずらしたのかと思ったようだが、室内にいる生徒達の様子を見てすぐにそれを否定したようだ。
何が起こっているのか分からず怯えている生徒達をバンガローから連れ出し、ひとまず管理棟に部屋を開けてもらうように手配してくれた。
ジャージ姿のまま、各自が荷物を持って管理棟に移動する。
ため息をつきながら荷物を抱え上げた相田君は、宮本君の様子がおかしい事に気がついた。
相田君が話しかけようとしたが、宮本君は相田君を避けるようにバンガローを出て行った。
施設の職員が入れ替わりに室内を掃除するためにやってきた。
ほんの一瞬、顔をしかめたが驚いているようには見えない。
なんだか、これまでにも同じ事を経験したみたいに。
頭の芯が重くてクラクラする。
何も考えたくない。
案内された管理棟の部屋でそれぞれに布団を敷き、生徒達は物も言わずに潜り込む。
相田君も早く眠って嫌な夢など忘れてしまいたかったが、心臓がドキドキして眠れそうにもない。
宮本君はどうしただろうと見てみると、顔の半ばまで引き上げた毛布の隙間から相田君の方をうかがっていた。
彼と目が合うと、慌てて頭まで毛布を被り、寝がえりを打って背中を向けてしまった。
(何だよ、ヤな感じ)
そんな事を考えているうちに、ようやく訪れた睡魔に眠りの中に引き込まれていった。
◆◆◆
翌日の朝食の時間。
他の班の子達が相田君達の班の方をチラチラと見ている。
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