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実際、おばさんも家に帰って先生がいなくなる事を母親に報告した時、こらえきれずにバスタオルに顔をうずめて泣き続けたそうだ。
そんなI先生が4年生の夏休みに「サマーキャンプをしよう」と提案した。
1泊2日の1クラスだけのサマーキャンプ。
お昼過ぎに学校へ集合。
持っていくのは、お米を1合と着替え、洗面道具、タオル、大きめのバスタオル。
夕方には学校の調理室で付き添いのお母さん達を手伝って、みんなでカレーを作った。
いつも食べているはずのカレーなのに、学校という場所でクラスの友達だけが集まって食べるカレーは、なんだかいつもより美味しく感じられたと彼女は笑う。
夕食の片付けが終わった頃、I先生が「学習の森に集合」するようにと声をかけた。
「学習の森」とは正門脇にある雑木林で、椎の木や樫の木、柏の木などが植えられている場所だ。
切り株風のベンチが設置してあり、生徒は自由に入って涼んだり、植物の観察学習をしたりするのに使われる。
何が始まるのかとワクワクしながらみんなが集合すると、I先生は愛用のギターを取り出して歌い出した。
この先生は学生時代に歌手を目指していて、教師になってからも自作の歌を生徒に披露し、クラスでも学級会や帰りの会にクラスのみんなで歌うのを楽しみにしていたそうだ。
教室の中で歌うのとは違い、開放的な屋外で歌うのは気持ちが良かったと彼女は思い出しながら目を細めた。
子供達にとってはおなじみの曲を3?4曲も歌い、みんなのテンションが上がった頃を見計らってI先生はギターを置く。
「この学校には『七不思議』っていうのがあってね……」
次は何をするんだろう? 期待に満ちた生徒達の顔を見回して、先生はニヤッと笑って口を開いた。
クラスのみんなは一瞬ギョッとした顔をして……それでもすぐに、興味津津で先生の話に耳を傾ける。
当時から怖い話が大好きだったおばさんは、先生が『七不思議』という言葉を口にした瞬間から、全身を耳にして話を聞く体勢をとった。
この小学校は、先ほども説明した通り創立されてから100年が経っている。
その100年の間には、もちろん「戦争」も経験している。
講堂や校庭に負傷者を運びこんで治療をするために、病院のような役割を果たしていた事もあるという。
運び込まれる負傷者の中には一般市民も兵隊もいたそうだ。
治療をするとは言っても、医者も薬も圧倒的に不足していた時代の事。
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