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どうすることも出来なくて亡くなる人の方が多かった。
その遺体を埋葬するための穴を掘る人手も場所もなく。
だからと言って遺体をそのままにもしておけず。
学校のグラウンドの端は崖になっており、その下はずっと森になっている。
苦肉の策として遺体を崖の上から投げ捨てる事になった。
「今、バレーコートになってるあたりから崖下をのぞくと、積み重なった死体がゴロゴロ見えていたんだよ」
おばさんは当時バレー部に所属していたため、I先生のその一言を聞いて全身に鳥肌が立ったのだという。
崖下には打ち損じたボールを探しに、何度も足を踏み入れていたからだ。
「そんな戦争で無念な亡くなり方をした人達の亡霊が、夜になるとグラウンドを歩き回るらしいぞ」
講堂の下は倉庫に戦時中に使われていた零戦があるとか、中庭の池で溺死した男の子の霊が出るとか、そんな話も聞いたのだが、おばさんは「グラウンドを歩く亡霊」の話を強烈に覚えているそうだ。
実はこの学習の森の外れには古い墓石が無造作に転がっており、墓地であった場所を潰してグラウンドを作ったという話もあった。
グラウンドの下にはまだお骨が残っていると言う噂もあり、クラスの友達の顔はみんな引きつっている。
そんな話を聞いているうちに周りはすっかり暗くなり、吹いてくる風も肌に生ぬるく感じられる気がした。
みんながシーンとなったのを見計らって、I先生が衝撃的な一言を口にした。
「これから何人かのグループに分かれて、肝試しをします」
当然のようにクラスのみんなからは、悲鳴のようなブーイングがあがった。
だが先生はニコニコしながら、「はい、じゃあグループになってー。移動するよー」と号令をかけ、さっさと歩き始めてしまった。
グルリと校舎を回り、『七不思議』にも出てきた池のある中庭を横切り、正門とは反対の位置にあるプールの前に到着。
みんながそれぞれ仲のいい友達とグループになると、付き添いで来ているお母さん達が、各グループに1本ずつ懐中電灯を渡してくれた。
おばさんのグループは、すごく仲の良かった女の子4人のグループ。
T永さんとY崎さん、N本さんとおばさんの4人。
いつでも何をするにも一緒の仲良しグループだった。
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