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「肝試し」は今いるプールの前から出発して、講堂の前を通り、バレーコートの脇を通ってグラウンドの端っこにあるジャングルジムにタオルを結びつけ、そのままグラウンドを突っ切って学習の森に辿り着いてゴール。
これが思った以上に距離がある。
どのくらい広かったのか想像してもらうためにざっと説明すると、正門に面して理科室や家庭科室のある特別教室棟、グラウンドに面して職員室や保健室のある教職員棟、そこから奥に向かって5、6年生棟、3、4年生棟、1、2年生棟がある。
各棟の間隔は広く、校舎と校舎の間にはツツジなどの植木と名前も知らない潅木が植えられた中庭になっている。
プールは25メートルのものと練習用の浅い15メートルのものがあり、目隠しの植え込みをはさんで図書館が別棟で建っている。
その横には大きな木造の講堂、シュロの木の下の記念碑前を過ぎるとグラウンドに出る。
200メートルトラックとサッカーコートのあるグラウンド、その一番端っこにジャングルジムはあった。
そしてジャングルジムにタオルを巻いたら、グラウンドを斜めに突っ切って学習の森まで戻ってくる。
夜の恐怖を体験するには十分な距離だ。
4?5人で構成されたグループは、男女交互にプール前を出発した。
通い慣れた学校の中でも、やっぱり夜は怖い。
普段は生意気なことばっかり言ってる男子が、空元気で歩き出すのが面白かった。
歩き出した時は勢い良く見えても、出発地点からちょっと離れると友人同士で肩を寄せ合って歩いている。
女子はしっかりと手をつないで、懐中電灯であちこちを照らしながらおっかなびっくり歩き出す。
I先生は「最後まで走らずに歩いてゴールすること」というルールを作っていたが、とてもではないがそんなルールを守れるとも思えない。
出発地点に待機しているおばさんの所から、メチャクチャにゆれている懐中電灯の光が見える。
向こうの方から「キャー」とも「うわぁー」ともつかない悲鳴が聞こえてきて、いやでも待っている子供達の恐怖心をあおっていった。
とうとう自分達の順番が回ってくる。
N本さんに懐中電灯を渡し、4人で肩を寄せ合うようにしておばさん達のグループは歩き出した。
プールのフェンスに沿って歩いていくと、校舎と講堂を結ぶ 仮設の渡り廊下があって、その向こうは真っ暗闇。
懐中電灯を持っていたって、小さな明かり一つじゃ全然足りない。
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