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クラスメイト達が何事かと集まってきた。
「大丈夫か?」
「立てる?」
集まってきたクラスメイトが口々に心配そうに声をかけてくれる。
そんなみんなの温かい言葉を聞いているうちに、おばさんの心も落ち着いてきた。
「うん、大丈夫。ありがとう」
両手でゴシゴシと顔を拭って、おばさんは立ち上がった。
「もう大丈夫だから」
みんなに答えながらなんとか笑顔を作ろうとしたが、それは成功しているだろうか?
「そっか、良かったぁ」
「ゴールまでもうちょっとだよ、行こう」
クラスメイトに支えられながら、おばさんはゴールとなっている学習の森へと向かう。
最後のグループも出発した後らしく、学習の森にはほとんどのクラスメイトが集まっていた。
おばさんが泣いていたのが分かると軽い調子でからかう男子もいたが、自分達だって怖がって叫びながら走っていくのを目撃されているためか、陰湿にからんでくるようなことはなかった。
おばさんがようやく自然に笑顔を浮かべる事ができるようになった頃、I先生がゴール地点にやってきた。
「おーい、みんな大丈夫かー?」
その後ろから、おどかし役をやっていたのか数人のお母さん方がやってくる。
「怖かったよ、先生!」
「講堂の方から声がしたけど、あれって、お母さん達なの?」
「そうよ。陰にかくれて、みんなを怖がらせようと思って。怖かった?」
「へん、全然怖くなかったよ」
「何言ってるのよ。『うわぁ』とか言いながら走っていったくせに」
恐怖から解放されてホッとしているのか、それとも照れ隠しなのか、クラスメイトのみんなは口々に肝試しの事を笑い飛ばそうと騒ぎ始める。
「怖すぎて、N谷ちゃんが泣いちゃったじゃないですか」
T永さんが唇をとがらせて先生に抗議した。
「悪かった、悪かった」
I 先生はみんなに詰め寄られて頭をかきながら、おばさんに向かって声をかけてきた。
「N谷、大丈夫か?」
「はい、もう大丈夫です」
たったそれだけのやりとりだったが、I 先生はおばさんが単純に怖がって泣き出したわけではないということを、なんとなく読み取っていたようだ。
「よし、じゃあ教室に戻って寝る準備だ!」
先生の号令でクラスメイト達は、わっと教室へ向かって走り出していった。
仲良しグループのみんなと教室へ戻ろうと歩き出したおばさんを、I 先生が呼び止める。
「N谷、ちょっといいか?」
「え?」
なんだろう?
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