3552人が本棚に入れています
本棚に追加
/334ページ
やがて言葉が詰まり、俯いてしまった。
「いいと思うよ」
なにか声をかけるべきだと考え、その結果でた言葉がそれだった。
慰めではなく、率直な感想だった。
「え?」
彼女が顔を上げる。驚いたことに、もはや泣く直前だった。その大きな右目が潤んでいる。
左目はわからない。眼帯が隠しているから。
「何て言えばわからないけれど、僕はその考え方、好きだな」
捲られたページには『死にたい』ではなく、表紙の題名通り、彼女の思想が書かれていた。
あのページとは全く異なって、丁寧な字で記されていた。
彼女は『死』が愛おしくて仕方ないらしい。
読んでいてイタくなるような文章ではあったけれど、それでもなんとなく共感できる部分があった。
それは、かつて僕が自殺志願者だったからかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!