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必死に死のうとして、生きているよりも死ぬ方が楽なように思えていた。
結局死ねなかったのだけれど。
でもだから僕は。
「もう少し、それを見たい」
彼女にはおよそ似つかわしくないその思想を。
いつも笑顔の彼女が隠していたその本性を見てみたい。
「……っ」
彼女はしばらく呆然と僕を見ていた。
やがて、なにか言おうと逡巡して口を開いたり閉じたりした。
視線があちらこちらへと、絶え間なく移動する。
ようやく意を決心したのか、彼女が深呼吸をして、真っすぐ僕を見つめた。
「こ、この後、時間ある?」
少し照れくさそうに彼女はそう聞いてきた。
窓から強めの夕風が入ってきて、手元のプリントを舞い上がらせた。
「あるよ」
この瞬間。
僕と彼女を隔てていた境界線が、静かに消えた。僕と彼女の繋がった瞬間だった。
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