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僕はかつて自殺志願者だった。
ようするに『死にたい』と思っていたわけだけれど、その感情をより正確に言い表すならば『生きたくない』だった。
生きていたくないから死ぬ。
たぶん、多くの自殺者はそう考えていたのだと思う。
苦の道から逃げ、より楽な道を選び、その結果自殺に辿り着いたのだ。
つまり何が言いたいかと言うと、死にたいと思うからには『生きたくない』理由があるはずなのである。
けれど、雛見秕にはそれがない。
彼女が見せてくれた『思想ノート』。
死を望む言葉こそ多く書かれていたものの、生きたくない理由は一つも書かれていなかった。
少なくとも、僕が読んだ範囲では。
死こそが至上。
その思想に至るまでの経緯は何一つわからないままだった。
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