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「あと、あれファーストキスだから」 「へえ」 「へえって。もう少し驚くなり照れるなりしないかなぁ」 「驚いてるよ。感情が顔に出ないタイプなだけ」 昔、それが悩みで鏡に向かって笑う練習とかしてたけれど、あまりにも気持ち悪くて吐きそうになった苦い思い出がある。 ちなみに、と僕は続ける。 「僕はファーストキスじゃない」 「…………え?」 暫くの沈黙のあと、彼女が頭に疑問符を浮かべる。 「嘘でしょ? いやいやいや、騙されないよ。まさかカナメがとっくにファーストキスを済ませていてイチャイチャを超えてイヤラシイことまで経験済みだなんて、あるはずがないじゃん」 「………………」 「なんで黙っちゃうの! せめてなんか言ってよ。本当みたいじゃん」 「本当のことだから。それより、あとどれくらいかかる?」
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