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普通にしていればただの元気な女の子なのだ。
その大きな右の瞳を輝かせて、彼女は笑う。
普段は、そういう風にしている。
いや、それも素なのだろう。
彼女の中に悪意なんて微塵もない。
あるのは純粋な好奇心だけだ。
僕は知っている。
彼女から最も遠い存在であるはずの僕だけれど、でもだからこそ、僕だけが知っている彼女の姿がある。
「ねえねえ、カナメ。私が明日死ぬって言ったらどうする?」
「どうもしないよ」
「えへへ、カナメならそういうと思った」
彼女の中には歪んだ望みがある。
「じゃあ、今日もやろっか」
そう言って、彼女は猫を抱き抱えた。
左目が潰され、前足を切り落とされた猫を。
それはそれは、愛おしそうに。
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