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止まると、身体の中に熱が溜まるのを感じた。 暦上では秋でも、夏の暑さがまだ微妙に残っていた。 遠くの空がほんのり紅い。 「とうちゃーく。ここだよ」 彼女は両手を広げて、それを自慢するように言った。 それ。 「ここって……」 小学校だった。 ただし、普通の小学校ではない。 「うん。向井野小学校。十年くらい前に、人数足りなくて廃校になったとこ」 住宅街からも、商店街からも離れているこの場所。僕らの通っている高校よりも、緑が多い。 というかほぼ山の中だ。 その立地の所為で、この小学校に入学する生徒は年々減少していったらしい。 校門に立ち入り禁止の看板がかけられていた。 しかし、秕はそんなの気にも留めず、ごく自然な動きで門扉をスライドさせた。
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