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彼女が目の前で尻もちをつき、それでようやくぶつかったのが雛見秕だと知った。
僕は平均的な身長で、決して背の高い方ではない。
けれど学年一の低身長を誇る彼女は、僕よりも頭一つ分小さかった。
つまり視界に入らなかったのである。
「ごめんね! 急いでたもんだから」
彼女は慌てて立ち上がると、翻ったスカートを正すこともなく、廊下に散らばったプリントを拾い始めた。
「こっちこそごめん。手伝うよ」
ノートにどれだけ挟んでいたのか、A4判やB5判のプリントが廊下を埋め尽くしていた。
「ありがとう、助かる」
と、彼女が言った瞬間、夕風が窓から入ってきた。プリントがまるでスケート靴のように廊下を滑っていく。
彼女が「あ、あっ」と短く呻きながら追いかける。
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