仮面のたくらみ

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「本当か? 過去に一度もやましいことがないと?」  耳元でささやき声が聞こえた。  この声は龍之介か?  いや、龍之介は紫のトラみたいな仮面をしていたはずだ。  もうなにがなんだかわからない。 「あのことを忘れたとはいわせない」 「あのこと……」  あのことって、あのことか?  まさか。  だってあれは俺とあの子しか知らないはずじゃあ……。  でもそれはあの子が誰にも話さなければのはなしだ。  俺は、はめられたのか?  一人素顔の俺は仮面の視線に耐えきれずに教室の外へ飛び出した。  勢い余って廊下にすっころぶ。  社交ダンスの女子部員も通りすがりの生徒も俺のことを見ている。  まるで教室の中での出来事を知っているかのように。
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