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嗜めるように麻美はおっさんに突っ込みを入れた。
「ダメだよ~。ちゃんと鍵を閉めなきゃ~。泥棒にはいられちゃうよ~」
いや突っ込むところそこじゃねえだろ!
「な~に、うちには金目のあるもん無いさかい。しょっちゅう開けっ放しにしといても大丈夫や!」
お前もおまえで人目を忍べよ!
「カワタロウさん、最近の空き巣を侮っては駄目だ。身体の一部でも漁って金を得ようとしているかも知れないぞ。気を付けた方がいい。というか一部を僕にくれ!」
最後、欲望が溢れてんぞ。
「メガネの坊主、なんや恐ろしいこと言うな」
おっさんが若干震えている横で千の目がきらりと光って言った。
「それなら私にもくれないかしら? 河童の身体の一部で呪いが出来るかどうか試したいわ」
恍惚とした表情で試そうとすんな!
「このお嬢ちゃんがいっとう怖いわ!」
尋常じゃない震えを見せるおっさんに、まあ、そこは同意するわ。
「ていうか、お前ら順応力高すぎるだろ!」
俺が叫ぶ勢いで突っ込むと同時に、縁側からいつもおいしい茶菓子をくれるご近所の釣り好きの渡辺のおじいちゃんが声を掛けてきた。
「おお、ちょうど家にいて良かった。カワタロウさんや、今日の釣りでこんなに大漁の魚が釣れたんですわ! カワタロウさんの言う通り、釣り場のポイントを変えて良かったですわい。これはそのお礼ですわ!」
「な~に礼には及ばんさかい。魚、あんがとうな。まあ坊」
渡辺のおじいちゃんが魚を渡していると、今度は町を巡回していた交番勤務の雪嶋さんが声を掛けてきた。
「カワタロウさん、この間の夏野菜ありがとうございました! あれとってもおいしかったです! また頂いてもいいですか?」
「もちろんええで! その代わり賭博(ギャンブル)で職質や逮捕を見逃せて欲しいんやけど……」
職質!? 逮捕!? うおい! 河童の口から犯罪者のような言葉が出てきたけど!?
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