第1章

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 お前ら、散々助けるとか言っておいて。人魚が可哀想だろうが!   人魚に謝れよ。  すると、人魚は赤い尾びれをビチビチと叩(はた)きながら笑顔で言った。 「三百年ぶりに故郷に帰れたからねえ。どうぞ。遠慮なく食べていってね~」  いいのかよ! 俺の気遣いを返せ。 「坊主も遠慮せんと喰え!」 「誰が喰うか! 食欲失せるわ!」  喰うことを拒否すると、不意に理人が人魚の出汁を飲みながら人魚に尋ねた。 「ところで、人魚さんは三百年間ミイラになっていたんだ?」  途端に人魚は憂いを帯びた表情でそのわけを語った。 「それは、ですね。今から三百年前――」 ~~回想~~  私が迷い森の湖で鯉の姿でゆうゆうと泳いでいた時でした。  顔なじみの河童さん――カワタロウさんが人間に追いかけられて私の住処に逃げ込んできたんです。 「待ってゴラァ! 河童ぁぁぁ。金返せや!」 「堪忍してや~」  私は驚き、二人の前に出て理由を尋ねました。 「そこの人、何故カワタロウさんを追いかけるんですか!?」 「こいつ、金を返す期限を守らずに貸した金を賭博に費やしやがったんだよ! 金を返せねえなら、見世物小屋に売ぱらう約束なんでな。嬢ちゃん退いてくれや」 「堪忍や、堪忍してや~」  みっともなく泣くカワタロウさんに同情した私はその金貸しの男に私を代わりに見世物小屋に売って下さいと。  絶対、カワタロウさんはお金を返してくれますと、カワタロウさんは泣きながら必ず私を助けに行くと約束してくれました。こうして私は借金のかたとして見世物小屋に売られ、いつしかミイラになっていたと言うわけです。 ~~回想終了~~
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