第1章

8/17
前へ
/17ページ
次へ
 目が覚めると、そこは見知らぬ民家の天井が見えた。意識が混乱するなか起き上がると――。 「おう、目覚めたか。坊主」  目の前に河童がいた。ちょっと待ってくれ。頭を一端冷静にさせてくれ。  俺の目の前にゆるキャラの着ぐるみを着たおっさんがいるんだが、どういう状況だ!? 「あっ! ヒロくん、部長! ハルくん、目を覚ましたよ~!」 「なに、本当か! 心配したぞ、春(しゅん)」 「御門くん、無事で良かったわ。ごめんなさい、私があんなことした所為で……。やっぱり、呪いの方が効率がいいわ。あんな怪我なんてさせないもの」  次々と俺を心から心配した言葉をかけてくれて嬉しかったが、最後の言葉!! 「千、てめえ、反省の色が見えねえぞ! それは確実に息を止めてやるってことか!?」  俺が食って掛かろうとすると、着ぐるみのおっさんが止めにかかってきた。 「まあ、落ち着けや、坊主。命が助かっただけでも良かったやんけ。嬢ちゃんも、そな恐ろしいこと言っちゃあいかんよ」 「ああ、すみません。もしかして、俺を助けてくれたのってあなたですか?」 「せやで。わしにも感謝せえよ。ちなみに頬っぺたの傷もわしが治したさかい」  着ぐるみのおっさんは俺の疑問に答えてくれた。そこで俺は慌てて礼を言うのと同時にもう一つの疑問を尋ねた。 「ああ、それはどうも。あの、一つ尋ねてもいいですか?」 「ん? なんや? オッチャンに言うてみい」 「あの、なんで河童の着ぐるみを着ているんですか?」  すると、着ぐるみのおっさんは慌てて答えた。 「えっ? わし着ぐるみちゃうで! 正真正銘の河童やで!! 今は見た目がプリティーだけどもな、信じられんかもしれんけど!? 昔はめっちゃイケメン河童だったんやで!! ほんまよ!」  はあ? なに言ってんだ、このおっさん。訝しげな目をすると理人が着ぐるみの頭を引っ張りながら答えた。 「いや、これは本物の河童だよ。証拠に力を込めても頭がもげないだろ?」 「痛たったた!! も、もげる! やめんかい!!」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加