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ー内緒だぜ。ここ、ブルーギルがたくさん釣れるんだ。ー
ヒロシがこっそり教えてくれた。
あの場所だ。そして、視線の先にヒロシが池に釣り糸を垂らして、こちらをびっくりしたような表情で見ていた。
本当に会えた!
ケンは嬉しくて、ヒロシのほうに駆け寄った。
「お前、なんでこんなところに居るんだよ。」
ヒロシの声だ。
「ヒロシ、ごめん。俺、俺・・・・。」
ケンは泣いて言葉にならなかった。
「何泣いてんだよ、お前。」
「俺が、俺が、約束をすっぽかさなければ。」
きっとこのヒロシは生きた人ではない。
でも、ずっと謝りたかった。
「海で釣ろうと思ったけど、気が変わったんだ。お前、来ねえし。」
ヒロシが口を尖らせた。
「ご、ごめん、ごめんよ。ヒロシ・・・。」
すると、ヒロシはこちらをきっと睨んで言った。
「足が滑って落ちたのは俺のせいだ。別にお前のせいじゃねえ。
だけど、裏切りを許すほど俺は心が広くねえんだよ。
もう二度とここへは来んなよな。お前の顔なんか二度と見たくない。」
そう言うとヒロシはプイっとそっぽを向き、竿をさっさとしまい、森の奥に消えてしまった。全てを許されるわけないなんてこと、わかりきっていたはずなのに。
それでも、ケンは悲しかった。
すぅっと首筋のあたりに気配を感じ、ケンが振り向くと「トマソン」が立っていた。先ほど飲んでいた、ワケのわからない赤い液体が目や鼻、耳からだらだらとまだ滴っていた。
「うわあああああああ!」
ケンは無我夢中で走って逃げた。その後を「トマソン」が赤い舌をベロベロと出しながら追いかけてきた。何で追いかけてくんだよぉぉぉぉ!
「はっ!」
ケンはそこで目が覚めた。
そこはケンの部屋だった。
え?確か、トンネルに行って・・・。
しかし、確かにそこはケンのベッドの上だった。
なんて長い夢なんだろう。
夢というには、あまりにリアルすぎる。
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