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「そりゃ大人だもん。表には出さないわよ」そう言って、松樹は杉元の腕を取ると、自分の肩を抱かせるようにして胸に押し当てた。「昨日はこんなことたくさんしちゃったし。家から近いホテルで。すんごかったんだから」
と、恥ずかしがる風の松樹。しかし、杉元が展開についていけずぽかんとしていると、突然キスされた。
「ね、ダーリン」
もう止める気もないし、止めても遅い。
どうなることやら。疑念に包まれている三國が次に何と言うのかその様子を眺めていると――どうしたことか、彼は涙を浮かべ始めた。
「ど……どうして泣くのよ」
三國が涙を手の甲で拭う。
「だってそうだろ? 中学ん時からずっと一緒でよ。好きなタイプはって聞いたら、いちご大福だって言ってたこいつなんだぞ? いくら女を紹介しても手すら握らなかったこいつが……あ、やべ」
「大丈夫。いちご大福の件は聞いてるわ。でも、私は違うんだって。いいんだって。だから私もオーケーしたのよ」
どうやらこちらから告白したことになっているらしい。三國は涙を流しながら杉元の手を握った。
「新一……ホントに克服したんだな。俺もこれで何の心配もなくなった。ホントに……おめでとう。おめでとうな!」
「あ、ありがとうございます……」
まさかこんな展開になるとは思ってもいなかった。
「なあ、あんた……いや、松樹さん。新一はホントにいいヤツなんだ。真面目で仕事もきっちりこなす。そりゃ人間だし色々あるけどよ……こいつを支えてやってくんねえか?」
「健次郎……」
つられて杉元も泣きそうになる。
「大丈夫。いい人だし捨てられない限りついてくわよ。あ、でも結婚とかはまだ先の話だから。一歩一歩、ね」
「ああ、もちろんだ。俺もできる限り二人を応援すっからよ。頑張れな、新一」
「え、ええ……」
「こんな嬉しい報告を聞けるとは、思ってもなかったよ」
話もまとまったところで、と三人は料理の注文をする。三國と杉元がカレー、松樹がパエリアを頼み、店員が厨房へ行くのを見届けると――彼女は三國を振り向いた。
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