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「あ、荒川中央警察署の杉元と申します! 逃走車両はそこを右に曲がって尾久橋通りに出ました! 救急は一台呼んでおります!」
ナンバープレートの番号を伝え、三國の安否を聞いたことで仲間だと理解してもらえたらしく、男たちは銃を下ろしてホルスターにしまうと、一人が無線を取り出して連絡を始めた。
「犯人二名は尾久橋通りへ抜けた模様。逃走車両は白いセダン」ナンバーと二人の特徴を伝え、「通行人一名が轢かれ重症、杉元捜査員も怪我を負っています。自分は店で待機を続けます」
通信を終えると監視を続けますと言って店へと駆けていった。
サラリーマンの脈を取ろうとしてしゃがもうとした杉元は、胸の痛みに耐えかねて思わず膝をつき、倒れそうになった。
「おい、大丈夫か?」残ったもう一人の刑事が杉元の肩を持って支える。
「大丈夫なの!? 救急車はすぐ来るって!」そこへ、松樹が駆け込んできた。
「あんたは?」
「彼女は関係者です。ご安心ください」アスファルトへと手をつき、杉元は改めて男性の脈を取る。わずかながら動いているのを確認して、深くため息をついた。「ところで店はどうなりました? 三國は?」
「中にいた客は突入時に跳ねられて負傷してる。三國と店主はスタンガンでやられたが、無事だ。しばらく動けないだけだろう。それより……店にあった五千万が奪われた」
その言葉に、杉元と松樹が目を見開く。
「残りの五千万が目的だったのですか……」
「しかも、例の五箇所のうち何箇所かで爆発が起きたらしい。あのガキ二人以外にも共犯者がいるかも知れない……くそっ!」
刑事が舌打ちする。してやられたのだ。
一千万円を五箇所に分けたのは警察の人員を分散させるための目眩ましで、この店を監視すると伝えたのも、店舗の警備を薄くするための作戦だったのだ。
五千万円を目の前で奪われた悔しさは痛いほど分かる。
その時、サイレンが聞こえてきた。
「来たな、立てるか?」
「え、ええ。こちらは僕が処理しますので、お店のほうをお願いできますか」
「分かった。何かあったら本部に頼む」
そう言って、その刑事もいったん店のほうへと戻っていく。入口で倒れていた三國が何とか立ち上がろうとしているのが見えた。これで一安心だ。
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