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再び処置室に戻ると、その前のベンチに座ってスマホへかぶりつくようにしている松樹を見つけた。
「ここでしたか」
「あ、どうだったの?」
「肋骨二本の骨折に右足首の捻挫です。全治二ヶ月だそうで……」
松樹はスマホを置いて立ち上がり、杉元の肩をさする。
「それより何か分かりましたか?」
「その様子だと大丈夫そうね」持っていたスマホの画面を杉元に見せる。表示されていたのはニュースの記事だった。「西日暮里駅のトイレと池袋駅東口の喫煙所で爆発があったんだって。二十人以上の怪我人が出たみたい。何人かは重症か亡くなったか……テレビでも報道され始めたわ。誘拐についてはまだ大丈夫。それにお店が襲撃された件もマイクロブログで呟かれてるのを見つけた」
看護師に呼ばれ、まだ治療が終わっていないと処置室へ連れ戻される。固定ギプスを胸に巻かれているところに、見覚えのある制服警官がやってきた。
「杉元先輩! 無事っスか!」
「福屋くんではないですか。どうしました?」
「応援で現場の整理してたんスよ。負傷者の搬送でこっちに来てたら、三國先輩から話を聞いて――先輩、こっちです!」
病院の中に響く声を上げながら、福屋が三國を連れて戻ってきた。
「ああ、健次郎。大丈夫でしたか? スタンガンでやられたと聞きましたが」
「しばらく動けなかったけどな。今はピンピンしてるぜ。お前のほうはどうなんだ? ま、元気そうに見えるが」
「肋骨を二本持っていかれましたので、しばらくは歩くのも辛いでしょうね」
「その程度なら良かった。でだ、新一。犯人を目撃したんだよな?」
「え? ええ。二十代前半ぐらいの二人組で、ヒゲメガネで泣きぼくろのあるアフロの男と、青い目出し帽をつけた目つきの鋭い男でしたが……」
店で張り込んでいた刑事にも同じことを伝えている。つまり、本部にもこの話は行っていて、三國も当然知っているはずだった。
「そのアフロの泣きぼくろって右目っスか?」
「ええ、そうですよ」
「了解っス」
福屋の確認は、見回りの時にでも気をつけようということなのだろう。
「似顔絵作成も頼みたいしよ。もう少し詳しく話を聞きたいらしいから、署まで来てくんねえか?」
三國の表情が一瞬陰ったのを、杉元は見逃さなかった。何が起こっているのか、それで杉元は悟ったのだ。
「ええ……構いません」
三國が松樹を振り向く。
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