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「あんたも事件を目撃したんだよな。一緒に来てくれ」
「え? 私? 別にいいけど……」
「よし、行くぞ」三國が福屋を振り返る。「お前は被害者についてやっててくれ。連絡先とか分かることを全部聞いとくんだ。重要な話があったら俺に連絡を頼む」
「了解っス!」
後を福屋に託し、三人は三國の運転する公用車で署へと向かう。三國が二人を案内したのは、二階にある取調室だった。
「へえー。こうなってたのね」
物珍しげに松樹が部屋の中を眺める。そこは六畳ほどの無機質な薄いグレーの壁に囲まれた空間だった。格子付きの窓が一つ、中央と隅にテーブルがあり、安そうなパイプ椅子が壁に畳んだ状態で立てかけられている。
椅子を三つ出して開き、それぞれテーブルについた。
「……で、だ。分かってるよな?」三國は非難するような目で、松樹と杉元を交互に見やった。「新一とあんたはあそこで何してたんだ? まさかデートだったとは言わせねえぞ?」
口を開きかけた杉元を制して、松樹が喋る。
「ホントにデートしてたのよ。でもさ、どうしたって事件の話になるじゃない? だから近くまでふらっと寄ったわけ」
「……新一は止めなかったのか?」
「それは――」
「止めたわよ。でも近くだし、歩いてたらあっという間に着くでしょ? 気づいたらガラスの割れる音がして駆けつけたのよ」
「そ、そうですね……」
言われるがままの杉元を、訝しげに見つめてくる三國。不穏な空気を感じ取ったのか、松樹が話を進めた。
「それを聞きにここへ連れてきたんでしょ? 刑事さんたちも見てたわけだし。写真あるから、これを使って」と、松樹がスマホをテーブルの上に置いた。店に突っ込んだ後にバックで出てきた白いセダン車のフロントガラス部分が映っており、そこには覆面とアフロの男の顔もはっきりと撮影されていた。「あ、ああ……悪いが、この写真、メールで送ってくれねえか」
「いいわよ」三國の携帯に送ると、彼はさらに本部へと転送した。「それで、あんたはスタンガンでやられたのよね?」
「……店に突っ込んできてな。こいつらが出てきて、一人が店の奥、部屋のあるドアに向かってった。俺が覆面のほうに駆け寄ったらスタンガンでやられて、厨房から出てきた親父も同じようにやられてた」
「発砲はしなかったの?」
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