真夜中の捜査

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 もしかしたら、松樹となら最終的に正しい男女の付き合いができるのかも知れない。そんな淡い期待のような気持ちが杉元の中に芽生えていた。裸を見ても何とも思わないが、杉元にとって松樹はただの知人より遥かに大きい存在になっており、それは三國と同じようなスタンスで接することのできる数少ない大事な相手になっていたのだ。  この気持ちを大切に育てていけば、いずれはきちんと欲情できる相手として脳と体が認識するのではないか。 「ふいー。いいお風呂だったわ。シャワーだけど」  しばらくして現れたのは、長い髪の毛を頭にタオルで巻いた松樹だった。せっかく持っていたジャージを脇に抱え、パンツ一丁と首にかけたもう一本のタオルで胸を隠しているという残念な姿の。 「……うちの父が見たら卒倒するような格好はやめてくださいよ……」 「大丈夫、あんだけ飲んだらちょっとやそっとじゃ起きないわよ。それに大事なとこは隠れてるし」  やはり惚れることはないなと半ば諦めながら、暑そうにタオルで体を仰ぐ松樹を隣の部屋に連れて行った。 「おー、すごーい。こんな部屋で寝るの久しぶり!」  それはごく普通の、どこにでもある四畳半の部屋だった。畳の上に来客用のマットとシーツを敷き、そこに掛け布団をかぶせて枕を置いただけの、簡素なものだ。  だが、当の松樹は嬉しそうに布団へと寝転がる。 「とりあえず服を着てください。目のやりどころに困りますので」 「別にいいじゃない。興奮しないんだし。それにさ、いつも人の目のあるところで寝てたから、こういう解放感があるのって久しぶりなのよね」 「風邪を引かれても困りますから」 「はいはい」  しぶしぶといった顔で立ち上がった松樹がジャージを着る。  そして、彼女は部屋に運び込んでおいたキャリーバッグを横にして中を広げた。タブレットを取り出すらしい。  悪いとは思いつつも、杉元はその中をまじまじと観察してしまった。  まず目につくのは、一週間分はあろうかという洋服。上着類も収納しているのでかなりかさばっている印象だ。その次に多いのが下着類で、色気のない実用的な色や柄のものがほとんどだった。  数枚のタオルにシャンプーやボディーソープ、カミソリなどがビニール袋に詰められているのが見える。その他は、化粧品や医薬品の入ったポーチ、預金通帳やカード類の詰まった小さなバッグがあった。
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