真夜中の捜査

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 松樹があっと声をあげて、手を叩いた。 「それよ。店の事情! 犯人たちは今日じゃなきゃなきゃいけない理由があったんだわ」 「あのあたりの道に人が少ない日、とかでしょうか?」  松樹がかぶりを振る。 「そうじゃなくて、今日は一ノ瀬さんが休みだったの」 「一ノ瀬さん、ですか? 松樹さんに猛アタックをかけていたという……?」 「そう。あの人もおじさんと同じで元プロレスラーだって話、したじゃない? 怪我で引退しちゃって、伝手であのお店に入ってお菓子作りの仕事を始めたんだけど、元々はノヴァだかノバとかいう団体でけっこう活躍してた人なんだって」 「そういうことですか」杉元も松樹の言いたいことに気づいて、頷いた。「車のフロントガラス越しではありましたが、犯人はどちらも普通の若者のように見えました。彼らが元プロレスラーの二人を相手にして勝つことはできませんね」  そうだった。自分と三國の二人がかりでも木崎一人すら抑えることはできなかった。格闘経験のない、または乏しい若者二人が戦える相手ではないのだ。 「だからスタンガンを使ったんだわ。刃物だと落としたらアウトでしょ?」 「確かにそうですね。いくら力が強くても電気には耐えられません。三國もやられていましたからね」 「だとしたら、従業員の可能性が高くなってこない?」  杉元が首を傾げる。 「どうしてですか? マイクロブログで休みの日程を投稿しているのであれば、誰でも知り得たのでは?」 「ううん。フォロワーだけの表示になってるのよ。相手はかなり限定されるわけ」  そう言って、松樹はタブレットでマイクロブログを開き、一ノ瀬のアカウントを表示した。画像のところに鍵のマークが見える。杉元も自分のスマホを使ってアクセスしてみたが、相互フォローになっていないため表示できないとメッセージが出てしまった。 「フォロワーは関係者の中だと……あれ? 私ぐらいだわ。あやちゃんは……あー、一方通行なんだ。フォローしてるけどフォローされてない」 「それは――悲しいですね」 「他もそういう人が多いわね。ってか、ほとんど女の子じゃないの。あいつ、私以外にもいっぱい手ェ出してたんだわ」 「本当かどうかはともかく、みなさん女性の写真が表示されておりますね。娘さんのアカウントにも……ロックがかかっているようですね」
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