真夜中の捜査

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 一ノ瀬のフォロワーにいる「あやっぺ」の名前を見て思い出した。彼女のアカウント画像にも鍵のマークが表示されている。 「そうね。だいたい友達同士のやりとりだから、非公開にしてる人が多いんじゃない?」 「犯人は娘さんのアカウントを使って生存確認をさせていました。開いてもらっていいですか? 僕からだと見えないので」 「え、そんなことしてたんだ」  松樹が画面をタップして、あやっぺの投稿を開く。そこには、料理の写真がずらりと並んでいた。料理の名前がコメントとして添えられている。 「これが木崎さんの言ってた、あやちゃんの生存確認ってこと?」 「生きていることと元気な証拠を見せろと店主が要求した結果、犯人が娘さんのアカウントを通じて送ってきたものらしいです。映っているネイルは娘さんのものだったらしく、それで安心したとのことでした」 「なるほどね……」  松樹が上から順に投稿を確認していく。それは、先週の土曜日、夜九時から始まっていた。それ以前にも似たような食べ物の写真が上がっていたが、ラーメンを中心としたもので、友人らしき女性の顔や絵文字をふんだんに使ったコメントがあったことから、木崎あや本人が投稿したものと見て間違いなかった。 「コンビニのばっかりね。それにしても……とってつけたようなおかずばっかり」  父親から言われて栄養を考えたのだろうか。おにぎりに卵、サラダにヨーグルト。サンドイッチに唐揚げとコールスローサラダに小さなカットフルーツの盛り合わせ。そんなものが並んでいる。  給食の延長線上にあるようなメニューにも見えた。 「一食七、八百円ってとこね。五千万奪うんだから、もうちょっといいもの食べさせてあげてもいいでしょうに」 「居場所が漏れてしまうので出前を取るわけにはいかないでしょうし、目隠しして食べられるものばかりだと、こういうものになってしまったのではないですか?」 「それもそっか。でも、ほら。ラーメンもあるじゃない」それは昨日の午後一時に撮影されたものだった。「あやちゃんが食べたいって言ったのかしら。鍋のまんまってことはインスタントラーメン? 面白い海苔の形してるわね。何この黄色い泡。卵? 豆みたいなのも浮いてるわね」  松樹が画像を表示して拡大させた。一瞬だけ左上のほうに文字が表示される。 「この感じの床って、アパートとかじゃないわよね。施設? そんな感じ」
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