真夜中の捜査

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 そう言って杉元はブラウザを開くと、検索サイトで「駄炉」と入力して検索した。ヒットしたのは五件。下位四件は文字化けを起こした何かのウェブページやドキュメントが引っかかっただけだったが、トップに表示された一件を見て、松樹があっと声を上げた。 「マイクロブログだわ。ロックもかかってない」  そこには「そう思う駄炉? 笑笑」という呟きが添えられている、ご飯と何かのおかずらしい画像が映っていた。画面を覗き込んだ松樹がリンクをタップする。 「趣味わるっ。おでんランチ千二百円って名前、普通つける? あ、そういや、あんたのアカウントって――」ふと顔を上げた松樹は、ログインし直そうとしていた杉元のタブレットに視線を落とし、呆れたように彼を見つめた。「いちご大福は正義……って? え、これマジのヤツなの? そうなんでしょ? センスのかけらもない……」  鼻で笑われた杉元は顔を赤くしながらログインし、マイクロブログのタイムラインを眺めていく。 「僕のセンスがないことより、こっちに集中してください」 「はいはい。ふぁあ……」  返事をしながら大きなあくびをする松樹。 「せっかく犯人に迫ってきたというのに、緊張感のかけらもない……」 「お酒飲んじゃったし、こんな時間だし。性欲ない代わりに食欲と睡眠欲があるって言ったでしょ。もう眠くって……」 「もうちょっと頑張ってください。コーヒーでも持って来ましょうか?」 「ううん、大丈夫。頑張る」  目を半分にさせながら画面を覗き込む松樹を横目に、杉元はまずおでんランチ千二百円のプロフィールを確認した。職業は「日本を救うおでん」と書かれているだけで他には何もない。  投稿をチェックしていく。書き込まれている呟きを見て、杉元は違和感を覚えた。地震が来たらびっくりしただとか、食べたものがおいしかったという、本当にどうでもいいものに混じって――ニュースを引用した上で真面目なコメントを寄せている投稿があったからだ。  中国が戦闘機による領空侵犯をした報道に対しては、遺憾の意しか伝えられない日本政府の弱腰外交を批判していた。海外で発生した災害の救助活動をして現地人から自衛隊が賞賛された記事には、最大限の賛辞を送っている。  多数の死傷者を出した中東のテロについては、その方法を批難するも、主義主張には一定の理解を示していたのだ。 「まずそうですね……」
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