真夜中の捜査

14/28

81人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
 他に目立ったのは、アニメとアイドルに対する攻撃的な呟きだった。ファンを腑抜け呼ばわりし、お前らが日本をダメにすると言い放っていた。特に嫌っているのは秋葉原に拠点を置く国民的アイドルグループらしく、平和ボケをますます許しているその根源として公式アカウントやファンに罵詈雑言を吐き、ファンと言い争いをしていた。 「あった……」  杉元はようやく目的のものを見つけることができた。  投稿に写真が出てきたのだ。撮影したのは二ヶ月前で、それは戦闘機が空を飛んでいるものだった。白地に青いペイントがされた機体で、両翼に日の丸が見える。 「あー……F3だっけ。ブルーインパルスのヤツだ」  松樹が目をこすりながら画像を見て頷く。 「詳しいのですね」 「何回か航空ショーに行ったから覚えてたのよ。ふわぁ……」松樹は大あくびをして、目にたっぷりの涙を浮かべた。「飛行機には興味ないけどさ、自衛隊の戦闘糧食目当てで寄ったのよ。ご当地ラーメンの屋台とかもけっこう出ててね。これがどうしたの?」 「この機体のストラップを娘さんが持っているのですよ。犯人が娘さんの生存確認で送ってきた画像にもありました。ストラップですね」 「……ってことは、このイベントで知り合ったわけだ」 「恐らくは。これで接点ができたというわけです……うん?」  その時。杉元のスマホが震えながら着信を伝えていることに気づいた。福屋康介という名前と電話番号が表示されている。  ちょっと失礼しますと告げて電話に出た。 「今晩は、福屋くん。こんな時間に珍しいですね。どうかされたのですか?」 「夜分遅くすいませんっス。今、お時間大丈夫っスか?」 「ええ。月曜までは時間を気にしなくていい身の上になりましたので」 「……噂で聞いたんスけど、ホントだったんスね。……なんつーか、俺……腹が立って。そんなことで先輩をクビにしようとか、警察自体が――」 「組織ですから、そういう論理があって当然だと思います。自浄作用がなければ、どこまでも偏った集団になってしまいますから。福屋くんの気持ちはありがたくいただきますが、今は自分の仕事に集中してくださいね」 「……すいませんっス」 「僕を励ましに電話をくれたのですか?」
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加