真夜中の捜査

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「それもあるんスけど、他にもあるんス。自分の思い過ごしならいいんスけど、気になって……三國先輩に電話繋がんなくて、それで杉元先輩に電話したんス。他の人でも良かったんスけど、もしガセだったりしたら申し訳ないな、って」 「今回の事件についての情報ですか?」 「そうなんス。なんで、もし間違いなさそうだったら、杉元先輩か刑事課の誰かに伝えてもらえませんか?」 「いいですよ」  そう言って、杉元はスピーカーモードに切り替えたスマホを布団の上に置いた。船を漕いでいた松樹が福屋の声を聞いてはっと顔を上げる。 「杉元先輩たちが病院で話してた二人の犯人なんスけど、その一人、アフロのヤツが俺の同級生かも知れないんス」  その意外なタレコミに、杉元が松樹を見やる。だが、当の彼女は眠気がピークに来ているらしく、福屋の言葉にも反応しないまま目を九割がた閉じた状態で小さく呼吸していた。 「そうだったのですか。写真があれば僕でも確認できるのですが……卒業アルバムなどはありますか?」 「それがないんスよ。今の住所とか仲間も誰も分かんなくて。だから迷ってたんス」  確かにそれだけでは警察もうかつに動けないだろう。捜査本部のリソースは限られており、確度の低い思いつきのような情報で話はできないからだ。 「何て言う名前で、どんな人なのですか?」 「名前は黒田勇樹。勇ましいに樹木の勇樹っス。高校じゃすげえ浮いてるヤツでした。ミリタリーオタクで、誰かれ構わず罵っちゃ、喧嘩をふっかけてたんス。俺も何度かいちゃもんつけられたことがあったんス」 「何を言われたのですか?」 「あいつも警察目指してたんスけど、書類選考で落ちちまったんス。多分、高校で何回か補導されたのと、同級生を二人殴って傷害事件起こしたのが原因だと思うんスけど……俺が受かったのをどっかから聞きつけたのか、突然家に来て散々罵声を浴びせられたんス」 「罵声、ですか」 「オタク野郎に治安を任せるなんて、日本は狂ってる。辞めちまえって。アイドルのファンなんていくらでもいるし、同級生にもいたのに何故か俺だけしつこく何度も電話してきたんスよ」
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