真夜中の捜査

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 昔疑われたことがあるのか。いや、そうじゃない。 「あー、もう。それじゃこのまま連れていきますからね」  セーターとジーンズに着替えた杉元は二人分のリュックを背負うと、松樹をお姫様抱っこしてそのまま一階へと降りていき、父親の高いびきが聞こえる廊下をそろそろと歩いて外へ出ると、車の助手席へ松樹を押し込んだ。  そして運転席へと乗り込み、車を出す。  風邪をひかせてはいけないと暖房を強めにしながら、午前二時を回り無人となった街中を西日暮里駅に向かって車を走らせた。そのまま駅を超えて不忍通りに入り、駒込、千石を抜けて、監察医務院の近くを差しかかったあたりで、 「えっ。えっ?」  と、松樹が起きた。揺れで目を覚ましたらしい。  手足を動かそうとしてシートベルトに気づき、窓から見える夜中の池袋を見て驚き、そしてジャージ姿の自分を見て、 「何? 私、誘拐されたの?」  と、言った。 「夜に弱すぎでしょう。いくらなんでもここまで起きないとは……」 「ガチで寝てたのよ。何なの? まさかあんたが誘拐犯ってことじゃ……」 「飛躍しすぎです。そうではなくて……犯人の居場所が分かったのです。少なくとも、午後十時時点の場所が」  杉元は自分のスマホを渡すと、福屋とのやりとりを改めて説明した。 「うへ。そうだったんだ。ホントに眠くって……あ、これって小学校? キャンパスとも書いてあるわね」 「校区を整理して使われなくなった建物を区が貸し出しているようです。そこの住所で検索すると、様々なNPO法人が出てきましたから」 「あー、そういや私も何回か会議室を借りたことあったかも。ってことは、犯人はNPO法人の人ってこと? そんなことってあるの?」 「よくいるそうですよ。自治体からの補助金を当てに運営をして、協賛金などをかすめとって豪遊している人たちが」 「犯人たちもそのうちの一つなの? 違う気がするけど……」松樹が首を傾げて唸った。「三國さんには連絡したの?」 「いえ、してませんよ」 「ホントに一人で頑張る気になったんだ?」 「それもありますが、不確かな情報で三國に手間をかけさせたくないのです。仮にそうだったとしても、情報の出どころを探られてしまえば、僕からだと発覚するでしょう。そうなれば、署長からの追及は逃れられません」 「会社員――じゃなくって、地方公務員だっけ? 大変よね、組織に属するってのは」
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