真夜中の捜査

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 ドアをもう少し開けて手招きし、松樹が部屋に入ってきたのを確認すると、杉元はドアを閉めてスマホの電源ボタンを押した。  室内にぼんやりとした明かりが灯る。松樹はほっとしたようにため息をついた後、壁一面を覆うように置かれている棚を見て、眉をひそめた。 「何これ……」 「物騒この上ありませんね」  まるでディスプレイされるようにして飾られていたのは、ライフル、拳銃、ロケットランチャーなどの武器だったからだ。杉元がスマホのディスプレイを向けて全体を確認する。  腰より上にはそういった銃火器の類が置かれているが、下のほうには防弾チョッキのようなものや、弾丸の入っているらしい箱、手榴弾などがダンボール箱へ無造作に入れられていた。  松樹もスマホを取り出して反対側の壁を見始める。机が一つ、それを挟むようにしてパイプ椅子が二脚置かれている以外は何もない。リノリウムの床がスマホの光を鈍く反射させていた。 「これがサイトにあった日本軍事史研究会ってヤツね」  松樹が机の上に積まれている書類の一つを照らしながら手に取る。 「代表、黒田勇樹様……これでつながったわね」 「これも彼のマイクロブログでの主張を裏付けることになりそうですね」  杉元も軍事関係の雑誌に挟まれていた一通の封筒を抜き出して松樹に見せた。宛先は同じ黒田勇樹だったが、差出人として全日本愛国志士連盟と力強い毛筆で書かれているのが分かった。  封筒から便箋を抜き出して見てみる。差出人は高齢なのか、古風な言い回しで――ぬるく、弱くなってしまった日本人たちを暴力を使ってでも矯正しようとする黒田の姿勢を賞賛しており、そのための援助は惜しまないとして、様々な協力ができることを伝えていた。 「貴殿が求めていた銃の用意もできている。代金の準備ができたら連絡を乞う……?」  杉元はスマホで部屋の写真を撮った。書類、棚の火器類、床、壁に張られたポスター。 「あれもそうなのよね、きっと」  松樹が棚の一部を指さした。そこには、明らかに銃があったと思われるスペースが空いていたからだ。  杉元はジーンズのポケットからハンカチを取り出して、同じ棚にある他の拳銃を持ってみた。 「モデルガンの重さではありません。本物か改造されているようです」 「これを武器にするってこと? だとしたら手紙にあった銃ってのは?」 「ここにないもの、でしょうね。恐らく……マシンガンの類かと」
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