真夜中の捜査

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「こんな夜中にすいません。まだ不確かなのですが、どうしても伝えておかなければならないことがありまして」 「事件のことか?」 「そうです。今は寮ですよね? あと数分で到着しますので、出てきてもらっても良いですか?」 「あ、いや……署じゃダメか?」 「僕が署に顔を出せるわけないでしょう? もう着きますから、出て待っていてください」 「あ、ああ。分かった」  通話が終わった頃には、町屋の住宅街へと入っていた。細い道を注意しながら進み、四階建てのマンションにたどり着く。入口の脇に車を停めた二人はリュックを持つと、一階の奥、ドアの前で立ち尽くしている上下スウェット姿をした三國の元へと駆け寄った。 「起こしてしまってすみません。ですが、事は一刻を争います」  そう言って杉元は持っていたリュックを開けると、中のモデルガンをハンカチで掴み取って三國に見せた。 「これは犯人のものと思われます。モデルガンのようですが、おそらく改造されているでしょう。彼らはこれらを使って、明日、何十人もを殺す可能性が出てきました。武器は他に火薬の類や、本物のマシンガンもあると思われます」 「……マジか」  やや眠たそうにしていた三國の目がぱちりと開かれる。杉元はこの推測に辿り着くまでの経緯を三國に伝えた。 「確かに、福屋の話だけじゃ動けなかったな。それにしても……まだ信じられん。あいつら、本当にそんなことをやるつもりなのか……」 「西日暮里と池袋では爆発物を使って何人も怪我をさせています。あれも明日のための実験だったとしたらどうでしょうか? まだ時間はあります。この状況をもって、明日のイベントを警備するよう、健次郎から進言してください」 「しかし……」  実感がないためだろう。まだ頭の整理が追い付いていないように三國が目を細めて腕組みをする。  それに三國の落ち着かない態度も気になっていた。ちらちらとドアを気にする視線は明らかにおかしい。 「何かあるのですか?」  杉元が三國の肩ごしに一○六号室と書かれたドアを見やる。 「誰かいるの? もしかして彼女?」  松樹も気になっていたのだろう、悪戯っぽく聞く。 「あ、いや……」 「健次郎、それは本当ですか? 僕の知らないうちに……」
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