真夜中の捜査

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「まあ、松樹さんだからいいでしょう」疲れが出たのか、かすむ目を擦りながら、杉元はエンジンをかけて車を走らせた。「松樹さんの言う通り、やんちゃな時代があったのですよ。昭和の漫画に出てくる不良みたいに暴れまわっていたのです。今では想像もつかないと思いますが」 「ま、そんな感じはしてたけど」 「そうですか? 僕はずっと一緒なので気付けていないだけかも知れませんね」 「それにしても、あんたと三國さんがねえ。ずっと思ってたけど、まるっきり正反対のコンビじゃない。あんたが絡まれたりしたのを助けたってわけ?」 「まあ、色々とあったのですよ」杉元は昔を思い出して苦笑する。「特に三國は身寄りがなく、施設であれこれと行動を縛られていたせいか……その反発はかなりのものでした。中学二年生の時は二十人を相手に大立ち回りをしまして、子供の喧嘩に出てきてしまった自由業の方たちすら半殺しにしてしまったのです」 「ハンパじゃない武勇伝ね……ホントなの?」 「ええ、この目で見てましたので間違いありません」 「あんたは隠れてたクチね」松樹が笑う。「もしかして、その時におじさんと知り合ったんじゃない?」 「そうです。僕との出会いもそこでした。父は騒ぎを聞きつけて駆けつけたのです。事情を説明すると、父は三國の境遇に同情して、色々と世話をしました。それが縁で僕とも仲良くなっていったのです」 「いいわね、そういう男の友情みたいなの」 「でも、それは長く続きませんでした。二ヶ月後にお礼参りと称して、三國のいた施設にやられた人たちが乗り込んできたのです。僕と父も駆けつけましたが、職員の方や子供も巻き込まれて怪我をして……それで三國は追い出されてしまったのです」 「もしかして、その時に家を貸してあげたの?」  杉元は頷いた。 「松樹さんの布団を敷いた部屋は、元々三國の部屋だったのですよ」  そうして高校卒業までの四年間を三人で過ごした。  元々性格の相性も良かったのか、杉元と三國は本物の兄弟同然に親しくなり、またそんな三國を父親は息子同然に扱っていた。道理の通らないことをすれば厳しく叱りつけ、人の役に立つことをすれば手放しで褒める。  事件が起きれば昼夜問わず駆けつけ、助けを求める人々に応じ、時には命を張る――そんな父親の背中を見た三國は、いつしか杉元と同じように警察官への道を目指していた。
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