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刑事だった。その中にいた三國が、拾うなと声を張り上げている。突然の事態に驚いていた福屋も、三國に合わせて周囲の人々にその場で留まるよう大声を上げていた。
「拾え! ゴミ共! 拾えーっ!」
それは、ホームから撒かれていた。声に気づいて振り返ると、ホームの端から二人の男がレジ袋に入っている一万円札を振り撒いていたのだ。
能面を着けた一人が次々と金を撒いていくその脇で、般若の面を被ったアフロ頭の男が、ホームに置いておいたボストンバッグからマシンガンを取り出して、ホームの上から構えた。
「にっ、逃げてくださいー!」
杉元がそう叫んだ時は遅かった。
「死ね! 死ねーっ!」
般若の男はそう叫びながら、金に群がっている群衆めがけてマシンガンを乱射したのだ。
パソコンのキーボードを乱れ打つようなけたたましい音があたりに響く。歓喜の声が渦巻いていた地上は、一転して、悲鳴と怒号に満ちた修羅場へと変わった。
次々と血しぶきをあげて倒れていく人々。逃げ惑う群衆はパニックに陥り、転んだ人を踏みつけて逃げようとして撃たれる人もいれば、金を拾っているその背中に銃弾を受けて倒れこむ人もいる。
「きゃーっ!」
それはホームでも同じだった。男たちの近くにいたカップルやグループが悲鳴を上げて逃げていく。
「みなさん! 逃げてください!」
杉元は叫んでいた。そんな彼らを振り返ることもなく、
「喰らえーっ!」
金を撒き終えた能面の男がポケットから二つの手榴弾を取り出して地上へと投げつけた。そしてすぐさまスマホを取り出して地上に向ける。
爆発音が二回起きて、煙が上がった。
「黒田! やめるんだ!」
逃げ遅れた二人の女性をかばうようにその手を引きながら杉元が再び叫ぶと、彼の声に気づいた二人がこちらを見てニヤリと笑い、
「死ねえええ!」
マシンガンを撃ってきた。
「うおおっ!」
「きゃあああっ!」
身を翻すようにして地面へと伏せる。杉元は横転しながら立ち上がると、リュックを黒田へ投げつけた。マシンガンの弾が当たり、宙でリュックが踊る。
「うおおおーっ!」
杉元は地面を蹴るようにして黒田へ飛びかかった。マシンガンを持つ手に手刀を当てて叩き落とし、般若の面を剥がす。
スマホを操作していた能面の男がジャケットからナイフを出して杉元を切りつけた。黒田ともみ合っていた杉元のワイシャツと肩が切り裂かれる。
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