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黒田の撃ったマシンガンは本物だった。劇場前にいたアイドル二人と八名の客、それに三人の通行人が銃撃を受けて倒れた。すぐに病院へと運ばれたものの、一名の客が命を落としたという。
また、共犯者の投げた爆弾で二十人ほどの怪我人が出た。現場には三つの爆弾が投げられており、直撃を受けた男性一名が死亡した。
「福屋が言ってたんだけどよ。あんな状況でも倒れてる人を介抱するより、金を拾って逃げたヤツがいたらしい。倒れてる体を踏みつけて、だ。それに……スマホで撮影して騒いでる馬鹿どももいたんだと」
聞けば、あの場にいたテレビクルーも最初はあっけにとられてただ撮影を続けていたものの、これをチャンスだと思ったのか、駆けつけた刑事に事情を聞こうと行く手を遮ったり、倒れている人に何があったか尋ねたりしていたそうだった。
それを見かねた福屋が邪魔だからどいていろと怒鳴りつけたのを、報道の自由は保証されているとわめいて口論になったという。
「それでも、新一とあんたがいなかったら……もっとひどいことになってたんだろうな。改めて……感謝してる」
と、三國が頭を下げる。
「そう言っていただけるとありがたいのですが……手放しで喜べませんね。亡くなった方のことを思うと……」
まさか犯人たちがホームから銃撃するとは思ってもいなかったのだ。今回は警察に全てを委ね、自分はそれを見届けるだけに留めておこうと決めていたため、何の準備もしていなかった。
もう少しでも早く二人を見つけられていたら、被害はもっと少なくなったのかも知れない。もし武器を携帯していれば、被害が出る前に事を治められていたのではないか。
ホームに来ることを予測していれば――。
「あんまり自分を責めるなよ?」考杉元の心を見ぬいたように、三國がその腕に手を置いた。「あいつらは電車でやってきたらしい。マシンガンと爆弾でひと通り殺したら、そのまま次の電車で逃げるつもりだったそうだ。御徒町の駅前でレンタカーが違法駐車しててな。あいつらが借りたものだと判明した」
「……すると、素直に自白しているのですね?」
「いんや」三國が悲しそうに首を横に振る。「訳の分かんねえこと抜かしてるそうだ。舌も回ってねえし、目も落ち着かねえ。取調室で小便も漏らしたとか」
「おかしくなった、ということですか?」
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