事件解決

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 叫びながらマシンガンを撃ち、立ち向かってきた杉元を殺そうナイフを振り回した彼らに、そんな様子は微塵も感じられなかった。 「いや、違うだろうな。おかしくなったフリをしてるか、ハイになってんだろ。血液検査で薬物が出たらしい」 「ということは、まだこの病院に?」 「ああ。刑事四人がつきっきりで様子を見てる」 「そうでしたか……」  何人も殺し、何十人もの人を傷つけた相手が、心身喪失状態で不起訴や無罪になったりはしない。そのはずだと思いながらも、杉元は一抹の不安を抱いていた。  薬物反応が出たということは、本人の意に反して犯行が行われたと主張される可能性が高い。おそらくそれを見込んで使ったのだろう。  仮に薬物使用が認められても、初犯であれば執行猶予付きになってしまう。  あの怪物たちがまた世に出てくるのかと思うと、胸が締め付けられる思いがした。 「もう犯行声明が流れていましたよね? マスコミやネットでは、どんな反応をされているのでしょうか?」 「ああ、その件か」三國の眉間に皺が寄る。「松樹さんから聞いた。あの投稿は清水――能面を被ってたヤツが投稿したらしい。運営会社は渋ってたみたいだが、警視庁からの要請で書き込みは消させてある」 「ですが、コピーがかなり出回っているようですよ」 「それも見た。何人かの記者に聞いてみたけどよ、今んところ、あいつらを中国人民解放軍の工作員だと信じてるヤツはごく少数派らしい。だが、既に政府も事態の把握に動いたとか言ってた。俺は当分帰れないだろうな」  そして、三國は杉元を見据える。 「それと、だ。あの時の動画が出回っててな。新一があいつら二人相手に孤軍奮闘してる動画は、百万回以上も再生されてるらしい」 「そうなのよ」  松樹がスカートからスマホを取り出してその動画を見せる。 「私は後ろ向きだったから顔は映ってないけど、あんたのはバッチリだったの」  それは三分ほどの短い動画だった。ぱっと見では三人の男が揉めているようにしか見えないが、よく見ると、マシンガンを手にした男とナイフを持った男を相手に、時おり血を流しながら奮闘している自分の姿が、顔まではっきりと分かる形で撮影されていたのだ。 「……これはまずいですね」
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