事件解決

11/20

81人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
「ああ。署長はもう見ちまっててな、どうしてあの場にいたか後でここに来て聞くつもりらしい。……お前を辞めさせないよう直訴してみたんだけどよ……軽くあしらわれちまった」  ありがとう、と杉元が頭を下げる。 「もういいのです。それより、健次郎まで疑われていたりはしていませんか?」 「多分な」 「おかしいわよね」憤ったように、松樹が鼻を鳴らす。「だって、たまたま立ち会ってテロを止めようとしただけじゃない。ネットのコメントじゃ、あんたへの賛辞はすごいもんよ? 犯人相手によくやった、って。元自衛隊員に違いないとか、プロの格闘家じゃないか、とか」 「ははは……」  空笑いする杉元に、松樹が優しい笑顔を向ける。 「木崎さんとやった時はすぐのされちゃったのに……すごいわよね。偶然じゃないんでしょ? 鍛錬してるとか言ってたけどさ、何かやってるの?」  その問いに、三國が非難めいた視線を送ってくる。 「言ってなかったのか?」 「い、いえ……」 「それってやんちゃしてた時のこと?」松樹も訝しげに杉元を見やった。「三國さんの武勇伝は聞いたわよ。一人で二十人ぐらいのしたんでしょ? 自由業の人たちも。もしかして、あんたも何か武勇伝あるの?」  三國の視線が一段と鋭くなった。 「お前、また俺だけを悪者に……」 「い、いえ……そういう訳ではありません。ただ、事実の一部を割愛しただけでして……」 「何なのよ、一体」  言いにくそうに息を呑んだ杉元を見て、三國が口を開く。 「確かにやんちゃしてたのは俺だ。その武勇伝とやらも大筋じゃ間違っちゃいない。だけどよ、中学ん時、二十人に囲まれた中の十人はこいつがやっちまったんだ。あとで出てきた五人のヤクザも、こいつが一人で半殺しにしちまった」 「え……それホントなの?」  松樹が怪訝そうに見やる。当の杉元は、恥ずかしそうに俯いた。 「何にも言ってなかったんだな。こいつ、空手じゃ全国レベルでな。中学ん時じゃニュースになったぐらいだったんだ。でもよ、警察に入るからって辞めてな」 「そうだったんだ……」 「五人のガキに襲われた時も、力任せに殴っちまったら死んじまうだろ? だから威嚇射撃しようとしたら、投げてきたナイフを避けようとして当たっちまったんだ」  当時のことを思い出した杉元が、反省するように眉を下げて顔を上げた。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加