事件解決

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「小さいバーでな。そいつの叔父が経営してて、そいつは店長として一人で切り盛りしてるらしい。だから、営業時間外の昼間に仲間を連れ込んでたってことだ」 「……口裏を合わせていたのでしょう?」 「多分な。それにその時間、そいつのバイト先のコンビニ近くで監視カメラに似たヤツが映ってるのも見つかってる。だが一方で、隣んちの女が何人か騒いでる声がしたって言っててな」 「いなかったことの証明ですか。……面倒な捜査になりそうですね」 「いや、そうでもねえだろうな」三國が自信ありげに拳を作る。「新一たちが見つけたあいつらのアジトから、総力を上げて辿ってるところだ。既にマシンガンを売った組織は見つけてガサ入れしてる。別件で逮捕したそうだし、後は時間の問題だろ」 「今さら誘拐事件について否認したところで、数人を殺害して十数人に怪我を負わせた事実は動きませんから」  そうであると信じたい。  政治や人権などといったものに惑わされず、人が人を怪我させ、殺したという事実のみで裁いてほしい。 「……そういえば、お店はどうなるの?」 「奥さんの話だと畳むそうだ。もう店は閉めててな、バイトも休ませてるらしい。娘はもうあの店にいたくないからって、明日の夕方に千葉に行くとか言ってるそうだ」 「明日? 千葉に誰かいるの?」 「奥さんの妹が住んでるらしくてな。当分そこで暮らすそうだ。本当は今日にでも行きたかったらしいが、現場検証とかもあって今日は支度できないからな。というわけで、俺もこれから捜査だ」  そう言ってパイプ椅子から腰を上げた三國の表情は曇っていた。 「……健次郎、頑張ってください」  そんなことしか言えない自分が嫌になる。 「ああ。新一も……頑張ってくれ」  そう言って、三國は処置室のドアに目を向けた。そこには誰もいなかったが、杉元にはその視線の意味が痛いほど分かった。 「ありがとうございます」  その返事を聞いて、三國は処置室を後にした。 「私もここにいていい?」 「できれば、外にいていただけますか?」 「……分かったわ。それじゃ、ちょっと調べものとかしてくるから」  松樹も名残惜しそうに杉元の手に触れた後、処置室を出ていった。
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