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「あと……合鍵ができるまで俺のを持っててくれ。テーブルの上に二万置いといたからよ、必要なもんあったら買っといて構わねえからな。それじゃ、行ってくる」
「うん。気をつけてね」
最後の言葉だけ優しく慈愛に満ちたような表情と口調だったことに、誰もが気づいたのを受けて――有川がまた顔を赤くさせた。
それを見て三國も気まずそうに照れ笑いする。
どうやらもう心は結びつきかけているようだ。杉元は冷やかしたい気持ちをぐっと堪えると、有川に挨拶をして車に戻り、二人を乗せて、まずは荒川中央警察署へと走らせた。
顔が見られないよう署の近くで三國を下ろす。
「あ、三國さん」
「どうした?」
「多分、後で連絡するから」
「あ? ああ、分かった」
背広をはためかせながら小走りに署へと向かう三國の背中を見つめながら、杉元は隣の松樹を見やった。
「それで……どうするのです?」
松樹は腕時計に目を落とす。
午後一時を回ったところだった。
「そうよね。ちょっと待ってて」スマホで検索を始める。「だいたい三十分前がギリよね? そうすると逆算して……四時か。あと三時間あるわね。移動に一時間かかるとして……まだまだ余裕ありそう」
「はあ」
「よし、とりあえずお腹もすいたしご飯食べましょ」
「え? それは構いませんが……その四時に何をするのですか?」
「決まってるじゃない」松樹は満面の笑みを浮かべた。「真犯人を捕まえに行くのよ」
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