対決

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 先ほどまで浮かべていた鬼のような形相から一転して、泣き出しそうな少女の顔へと変えたあやが、三國のところに駆け寄っていく。 「聞いてください、私――」  すかさず松樹がその腕を引っ張る。 「それも不正解。スリーアウトね」と言って、松樹はポケットの中からスマホを取りだした。画面にはマイクの絵とともに赤い丸が表示されている。「全部録音してたのよ。全部自分が計画して、あいつらを使ってアキバで銃撃させて、カナダに三千万持って逃げようとしたこと……全部が。もう終わりよ。浅はかねえ。バッカじゃないの?」  すると、その手を振り払ったあやが松樹を平手打ちしようと右手を振りかぶった。だが、その手を三國が掴み、そのまま後ろ手に回して肩を掴み押さえる。 「このクソ女! 死ね!」 「おー、こわ」そうは言いながらも、松樹はスマホからMicroSDカードを抜いて、傍らにいる刑事へと渡した。「音声ファイルは一つだけなので、それで聞いてみてください。自白してますから」  気づけば、行き交う人々の流れがゆっくりとしたものになっており、何人かは足を止めて杉元たちを何事かと見守っている。  その様子に気づいたらしい三國が杉元に視線を送った。連れて行くという合図だ。  杉元が松樹の手を取った。気づいたらしい松樹があやに笑顔を送る。 「それじゃあね。あやちゃん、さようなら。元気でお勤め果たしてきてね」 「はっ。あたしはまだ未成年よ! 名前も出ないし、その気になりゃ一年ぐらいで出てくるわ! それでやっつけたつもり? またバカな奴らを騙して金を奪ってやる!」  中指を立てるあや。これが素の性格なのだろう。 「それなら心配しないで。私が名前つきで悪事を全部書いてあげるから。毎週のようにマイクロブログを更新して、二千人のフォロワーさんを通じて、全世界にあんたが悪女ってことを伝えてあげる。良かったわね。有名人になれるわよ」 「ふっ、ふざけんな!」松樹を蹴ろうとして、今度は三國にがっちりと羽交い締めされた。「死ね! このクズ女!」 「社会的に死ぬのはあなたよ。それじゃね」松樹は手を振った。「三國さん。あとで警察署行ったほうがいい?」 「そりゃ、もちろんだ。説明してくんねえと分かんねえよ」 「離せよ! 死ね、クソババア!」 「暴れるんじゃねえ。怪我すんぞ」 「誰か! 誰か助けて! さらわれる! 誘拐されちゃう!」
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