81人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
大声で叫ぶあや。騒ぎを聞きつけた駅員がやってくる。もう一人の刑事が警察手帳を見せながら、困ったように頭を下げていた。
なおも暴れるあやを引きずるようにして、三國が駅の外へと連れて行く。その後に続く刑事。変なところ触んないでよ、痴漢。そんなわめき声が徐々に小さくなっていく。
そして駅の中にあった流れが元を取り戻した。
二人の背中を見ながら、松樹はため息をつく。
「ホントだったらこのままジ・エンドと行きたいけど、やっぱ映画みたいにはいかないのね」
杉元が苦笑する。
「当たり前ですよ。さ、行きましょう。何だか……気持ち的に疲れました」
とぼとぼと歩き出す杉元。その後をちょこちょこと歩きながらついていく松樹。しきりにため息をつく杉元。
「どしたの?」
「女性とはあんなにも変わるものなのかと……」
「そりゃそうでしょ」
「松樹さんはあまり違和感なかったのですが、あの清楚な感じの子があんな悪事を計画して、男二人を操った上に、逃げようとしてあんな汚い言葉を吐くなんて……」
「……何で私だけ違和感ないのよ」
「ほら、置いていきますよ」
杉元が歩くスピードを上げ、駅の出口へ向かう。
「ちょっと!」
松樹は走るようにしてその後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!