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「そりゃそうかも知んないけど、世の中なるようにしかならないもんよ。あんただったら、警察じゃなくても大抵の仕事はこなせそうだしね。それとも、そんなに交通課で取り締まりしたかったの? 白バイに憧れてたとか?」
「白バイに興味はありますが、あんな風にバイクを扱えませんし、別段憧れてはおりません」
「じゃあ、何で警察官になったわけ? 大した理由もないなら、辞めちゃったら?」
「また適当なことを……」
どうしてこの人はずばずばと傷つくようなことを言ってくるのだろう。いや、これも作戦なのだと自分に言い聞かせ、苛立つ気持ちを抑えようと深呼吸する。
「適当じゃないわよ。規則に縛られて自由に動けないことが、あんたをどれだけ苦しめてるか知らないけどさ。そんなんじゃ続ける意味ないんじゃないの、って言ってるの」
「やる意味は自分で見つけるものだと思っておりますから、松樹さんに考えていただかなくても結構です」
「だってさ、交通課なのに捜査してたりしてて変じゃない。こだわる必要あるの?」
「ですから、他の方に口を挟まれる問題ではないと、何度も――」
「代々刑事の家系とかじゃないんだったらさ」
「代々刑事の家系だから続けたいのです!」
そう言った次の瞬間、杉元は後悔していた。揺さぶられまいと構えていたのに、しっかりと乗ってしまった自分が情けなくなる。
「え? そうなの? おじいさんまで三代、とか?」
「……忘れてください」
「もう言っちゃったんだし、調べればわかることなのよ? 言わないんだったら、また交通課にはとこキャラでお邪魔するだけだからいいけど」
「どんな脅迫ですか、全く……」杉元は空咳をして続ける。「うちは四代前から警察官なのです。曾祖父は田舎の小さい警察署の署長をしていたそうです。東京に引っ越してきた祖父は刑事を、父は同じく刑事を荒川中央警察署でしておりました。だからこそ……続けたいのです」
「へー、そうだったんだ。でも、何で刑事じゃなくて交通課になったの? あ、そっか。それがこの前言っていた『過ち』ってヤツなのね?」
この人は自分で作った傷口に嬉々として塩を塗りこんでくるタイプだ。ドSという人種だろう。もうこれ以上は受け容れられないし、この先を話すつもりもない。
「……ほら、もう着きますよ」
気がつけば、新三河島の駅前が見えてきていた。
「あ、やっぱりここはやめて千住大橋に」
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