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「どうせ中に無線のスピーカーとか仕込んでるんでしょ? 誰よ、亜希? いや、あいつはこんな馬鹿げたことしないから……そっか、芽衣子ね。帰る時に仕込んでいったんでしょ。彼氏と二人して一人ぼっちのあたしをからかおうだなんて――あれ? 何もない」
結局、あたしの探してる機械は見当たらなかった。
「それはそうだ。俺が話しているからな」
「ん、分かったわ、部屋ね。どっかに盗聴機的な物が――」
六畳一間の部屋を片っ端から捜索する。テーブルの裏側、ベッドの下、まくらの中――だけど、妙な物はひとっつも出てこない。
立ち尽くしてあたりを見回す。
うぬう。
「ひより、探すだけ無駄だ。本当にバッグが喋っているからな」
腕を組んで唸るあたし。ここまで来ると信じるしかないのかしら。
「ちょっとどういうことなの? 夢じゃない……わよね。あたし起きてるし」
「ばあさんからも言われてたじゃろ?」
「ひっ」
今度はシチサンでもタテロールでもない、渋く低い老人の声がどこからともなく聞こえてきた。
「あら。オオグチはまだ起きていたのですね」
「え、オオグチも喋れるの?」
タテロールの言葉を聞いて部屋の隅を振り返ると、そこにはさっき芽衣子の魔の手から遠ざけるべく置いたオオグチがそこに佇んでた。
「ってか、おばあちゃんがバッグと喋れるって言ってなかったわよ?」
「そりゃそうだわな。実際、頼子と話をした覚えはないからの。しかし、いつも言ってたじゃろ? モノに魂は宿る、九十九神はいらっしゃると」
そう言えば、小さいころにそんな話を聞いたっけ。人は道具を使うことで豊かな生活を送ることができる。それに感謝して、人は道具を大切に扱う。だから道具も応えてくれる。
それはやがて信頼関係につながり、確かな愛情が育まれて、そこに神様が降りてくるのだと。
「確かに聞いたことあるけど……」
あたしの道具たちに降りてきたのは、イギリス貴族みたいなお嬢様と、うざい話し方をする男、それに老人で――神様とはほど遠い感じだった。
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