第1章

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 メールぐらいで電話なんてそんなにしないし。  それが身に染みてきたからこそお母さんの電話が嫌になってきて。婚活でもするかなーって思うものの、ネットでカタログを見るように男の人を探すのも何か違うなと思うし、そもそも男の人と付き合ったことないから「これからこの人と一緒に生きる」を前提に腹の探り合いをするだなんてあたしには無理。 「うーん……」  とりあえずテレビをつけてみたものの、ゴルフとか競馬しかやってなくて――ぼーっと見てたら、起きてからまだ四時間しか経ってないのにまた眠くなってきちゃった。  体がだるいせいなのかな。  掃除は昨日したから特にやることもないし、ちょっとうたた寝しちゃおうかな。  寂しさも紛れるはず。  目をつぶると、ふんわり全身が浮くような感じがしてきた。    - 「やっべ……」  起きてみたら夜の十時って、あたしどれだけ寝てたのよ。そりゃ確かにここ最近残業ばっかりで疲れてたかも知れないけど、貴重な休日を一瞬にして失ってしまったことにまた気が滅入ってきちゃうじゃないの。病も気からって言うし、心なしかお昼よりもさらに体がだるい感じがする。 「はっくしゅ!」  額に手を当ててみたらけっこう熱くなってたのに気づいた。それに何だか寒い。  朝のニュースだと今日は気温が高めだったはずだから、外が冷えてるわけじゃなくて──これはあたしの体温が高くなってるってことなのよね。明日は仕事だってのに、まいったな。 「風邪みたいですわよ。ひよりは病気にならないことだけが自慢でしたのに、これで特徴がなくなってしまいましたわね」  誰よ、さくっとあたしの心をえぐるような台詞を吐いたのは──と、重たくなった体を起こしてあたりを見回してみたけど、誰もいなかった。そして、昼間に芽衣子の腹話術と勘違いした若い女の子の声と同じだったことに気付く。  周りには誰もいない。やっぱり幻聴なのかしら。風邪じゃなくてそういう声が聞こえる別の病気なんてあったっけとか思い出してみたけど、そもそもそんな知識がないあたしの脳は検索結果がゼロ件でしたとしか返してくれない。 「あー……テレビの声か。何よ、それしか特徴がないとか失礼ね」
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