第二章

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「いってーな……」 頭を強く打ち、何とか意識を保っていたカナタは目眩をしながらも起き上がった。 そして服についた汚れを手で払い、すぐに状況を確認する。 初めは親父が急に挑戦状を叩きつけてきたのかとも思ったが、それは違うと認識した。 「ん?どこだここは。こんなところ見たことないな」 そこは森の中だった。 人間が立ち入った形跡は全くなく、延び放題となったツルはあちこちに絡まっている。 前方には泥が混ざってとても生き物が住めるようには見えない池があり、周りで鳴いている虫が不気味さをさらに際立てていた。 カナタは冒険好きで安全危険は関係なく適当にドカドカ入っていくのだが、彼自身にもこの場所は記憶にない。 「つーか俺はなんでこんな吹き飛ばされたんだ?親父はこんなめんどくさい真似はしないからなあ」 魔物が近くにいないことを確認し、再度こうなった理由を考える。 だがさすがのカナタでも次元を越えて魔法がぶつかったなんて想像できなかった。 思考を断念し、行動に切り替えた。 「まあいいや。とりあえずこっちに……」 カナタは池と反対の方向に歩くことに決めた。 今手元にあるのは背中に背負った大きな剣「雷電剣(ライボルグ)」のみである。 運良く剣を所持はしてはいたものの、食糧は常に持っているわけではない。 日が沈む前にはここで何か食糧を確保しておきたいところだ。 そんなことを考えながら歩いていると、左に人型の魔物が姿を現した。 「ギギッ……」 緑色の肌を持ち、ぼろ布を纏いながらこちらを睨んで威圧してくるそれは、どこからどうみてもゴブリンである。 個体としての能力は、新人兵士でもごり押せば倒せるぐらいに弱い。 ゴブリンの強さは無駄に高い繁殖力と集団行動なのだが、今回はどうやら一匹のようである。 「ああああ!」 意味不明な現状を盛り上げるために大声でゴブリンに斬りかかったが、呆気なくそれは倒れた。 吹っ飛ばされてからの初戦闘は僅か一秒で終わった。 その瞬間、その様子を見ていた動物達は我先にと逃げ出した。
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