プロローグ

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 そこでしか会えない人がいた。  そこにしかないもの、そこでしか見れない景色、そこにしか吹かない風。  多分、それと似たようなものだ。  行けばそこにいるから、会おうと思えば会えるのに、そこ以外ではすれ違うこともない。  それは例えばコンビニだったり、図書館だったり、レストランだったりする。  顔は覚えているからすれ違えば分かる。  だから、本当にそこでしか会えないんだと思う。  多分、住んでいる世界が違うのだ。  上流階級と下流階級とかではなくて、人それぞれが持つ生息地のようなものが違う。  他全てが違くて、その場所だけは被っているから、そこでしか会えないのだ。  それが自分の場合は、公園だった。  小学生の頃、自分はいつも本を読んでいた。  昔から、人と話をするのが苦手だった。  話しかけられる分には、一応の受け答えは出来る。  でも、自分から話しかけたことは、なにかどうしようもない用事があったときを除けば記憶にない。  一応の受け答えだって、おはようと言われておはようと返す。  遊びに行こうと言われてうんと返す。  その程度のものでしかない。
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