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そこには、一人の女が立っていた。
「もう!何時まで待たせるのよ!!」
「悪い」
女は長くウェーブのかかった黒髪を耳にかけ、俺に近づく。
「本当に悪いと思ってるの?」
と、詰め寄られたが
「悪かったよ。本当に思ってる」
女の頭を撫でながらまた謝った。
小柄で大人しそうな体からは想像が出来ない強気な態度。
髪に手を通して、すくい上げる。
ふわふわの髪に愛しい気持ちが込み上げてくる。
その後も遅れたことに対してブツクサ言われたが、全てを聞き終えた頃に。
「ねぇ……もう、いいの?」
と、不意に俯きながら聞いてきた。
「あぁ。悪かったな、待たせて」
女の顎を持って上を向かせる。
すると、先ほどの強気な言葉は何だったのかと思うほど頼りなく眉を下げ、瞳に涙を浮かべた女。
目尻にキスをして涙を吸い取る。
「………ありがとう…ずっと、待ってた……………思い出してくれて、本当にありがとう 」
そう言うと、涙が頬を伝った。
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