第1章

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そこには、一人の女が立っていた。 「もう!何時まで待たせるのよ!!」 「悪い」 女は長くウェーブのかかった黒髪を耳にかけ、俺に近づく。 「本当に悪いと思ってるの?」 と、詰め寄られたが 「悪かったよ。本当に思ってる」 女の頭を撫でながらまた謝った。 小柄で大人しそうな体からは想像が出来ない強気な態度。 髪に手を通して、すくい上げる。 ふわふわの髪に愛しい気持ちが込み上げてくる。 その後も遅れたことに対してブツクサ言われたが、全てを聞き終えた頃に。 「ねぇ……もう、いいの?」 と、不意に俯きながら聞いてきた。 「あぁ。悪かったな、待たせて」 女の顎を持って上を向かせる。 すると、先ほどの強気な言葉は何だったのかと思うほど頼りなく眉を下げ、瞳に涙を浮かべた女。 目尻にキスをして涙を吸い取る。 「………ありがとう…ずっと、待ってた……………思い出してくれて、本当にありがとう 」 そう言うと、涙が頬を伝った。
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