気付かなかったんじゃない

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同じ年頃の女の子が座っていた。 「電車、来てんぞ」 「……」 読書に夢中なのか、電車の音にも俺の声にも反応しない。 「おい!聞いてんのか!?」 その子も自分も電車に乗り遅れてしまわないかと焦って思わず大きな声が出る。 「……」 それでも彼女は涼しい顔で視線を本に落としたままで、腹が立った。 「無視してんじゃねぇよ!!」 短気…。 よくそう言われてはいた。 「ッ!?」 勢いで服を掴みあげると、今やっと俺の存在を知ったみたいに目を見開いてひどく驚く。 「あ…」 彼女が読んでいた本を見て、俺もやっと彼女の事に気付き慌てて手を離す。 「ご… ごめんっ!!」 俺は怖くなって電車に乗る事も忘れてその場から逃げ出してしまった。 彼女が読んでいたのは手話の本だった。
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