第1章

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ひどい雨・・・ 会社の帰り、夕立にやられた。 咄嗟に駆け込んだのは屋根つきのバス停。 「タオル、貸しましょうか?」 びっくりした。 誰もいないと思ってたのに。 女の子は視線を本に残したままそう言った。 「あ、大丈夫。ありがとう」 「タオル借りたら洗って返さなきゃいけないし。また会えるかどうかなんて分かんないし」 ・・・何でこの子・・・ 「何でこの子、俺の思ってること」 彼女は俺の心を読んだ、とでも言うのだろうか。 「あの・・・」 「人の心を知ることは、思ったより簡単でその心の中は思ったよりも冷たい。それは私が今日まで生きて分かったこと」 そこまで言って、彼女はやっと顔を上げた。 「他人の心が分かってしまう女の子の話です」 ・・・何だ、本の話か。びっくりした・・・。 その時丁度雨が弱まった。 俺は今の内だと駆け出した。 「何だ、本の話か」 彼女の声は、どんより曇った空に溶けた。
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