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そっと、弓槻の指先を掴む
――離したくなくて……離れたく、なくて
「――ね」
「ん?」
「……や、いーや」
絡まってる指先。
弓槻はそれを、振りほどこうとはせず
ただ、だまってされるがままだ
冷えた指先を、握りしめて――この体温の低さに……胸が、ざわつく
「冷たい」
「何がよ」
「お前の手」
「冷え性なの」
「あ、そう」
弓槻の存在は――俺にとってはとても不安定で
だからこそ、儚く感じるのか
――俺を残して逝った両親や……松岡さん
俺を愛してくれる人は――いつも
俺だけを残して、この世から、消える
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