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ボケッとしている弓槻をよそに、余裕ない俺はスーツケースに手をかけた
「――さ」
「へ?」
「あのさぁ」
玄関に向かって歩いているその瞬間
弓槻に背中を向けて
小さな声を出した
喉元で、詰まる言葉
「――、なんでもない」
そう言った声は、小さすぎて
我慢――しきれなくて、なんとか飲み込んだ
それは、飲み込んだというよりも、どこからどう話せばいいのかわからなかった
「七瀬
――七瀬、ってさ」
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