喪失 #3

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ボケッとしている弓槻をよそに、余裕ない俺はスーツケースに手をかけた 「――さ」 「へ?」 「あのさぁ」 玄関に向かって歩いているその瞬間 弓槻に背中を向けて 小さな声を出した 喉元で、詰まる言葉 「――、なんでもない」 そう言った声は、小さすぎて 我慢――しきれなくて、なんとか飲み込んだ それは、飲み込んだというよりも、どこからどう話せばいいのかわからなかった 「七瀬 ――七瀬、ってさ」
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