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俺と――シンクロしたように
弓槻の声色が、沈む
「やっぱ、いーや」
何を言いかけたのかわからないが、そう続きを放り投げた弓槻に俺は安堵した
お互い、言葉にしてしまえば
きっと――この関係が終わるのを感じたんだと。
そう、思う
チャリン、と玄関に置いてあった鍵を手にとって
俺はスーツケースを持ってない片ほうの手をさしのべる
俺の差し出した手に、弓槻が華奢な軽い手のひらをのせた
そっと包み込んで、手をひく
廊下に出て、その指先に指を絡める
伝わる、体温
誰と重ねても変わらないはずのその体温は、――気が狂いそうになるほど俺の身体に伝わってくる
「七瀬、ね」
エレベーターに乗り込んだあと、すぐに俺の肩に顔を預けて、弓槻が物欲しそうに俺に瞳を向けた
「ん?」
そう、余裕ぶるのが精一杯
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