喪失 #3

17/35
1483人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
俺と――シンクロしたように 弓槻の声色が、沈む 「やっぱ、いーや」 何を言いかけたのかわからないが、そう続きを放り投げた弓槻に俺は安堵した お互い、言葉にしてしまえば きっと――この関係が終わるのを感じたんだと。 そう、思う チャリン、と玄関に置いてあった鍵を手にとって 俺はスーツケースを持ってない片ほうの手をさしのべる 俺の差し出した手に、弓槻が華奢な軽い手のひらをのせた そっと包み込んで、手をひく 廊下に出て、その指先に指を絡める 伝わる、体温 誰と重ねても変わらないはずのその体温は、――気が狂いそうになるほど俺の身体に伝わってくる 「七瀬、ね」 エレベーターに乗り込んだあと、すぐに俺の肩に顔を預けて、弓槻が物欲しそうに俺に瞳を向けた 「ん?」 そう、余裕ぶるのが精一杯
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!